ベジタリアンの食事は味が薄くて、数日で飽きてしまうと思われがちです。けれど、お肉料理で感じるコクの多くは、きのこや野菜、海藻、発酵食品にもともと含まれている旨み成分から生まれています。その引き出し方を知れば、化学調味料を使わなくても、味のまとまったベジごはんが作れます。
野菜にも宿る「第五の味」、うま味
甘味、酸味、塩味、苦味のほかに、私たちの舌はうま味も感じ取ります。深くて満たされるようなおいしさ、いわゆる「コク」の正体です。20世紀初め、日本の化学者・池田菊苗博士が昆布だしからこの味のもとを見つけました。それがグルタミン酸です。グルタミン酸は、完熟トマト、きのこ、昆布、発酵大豆など、ベジタリアン向けの食材にも自然に含まれています。
干し椎茸には、別のうま味成分であるグアニル酸も豊富です。グルタミン酸とグアニル酸が出会うと、うま味は一気に強くなります。昆布と干し椎茸を両方使っただしが、どちらか一つだけのときよりずっとおいしいのはそのためです。
- 干し椎茸、ふくろ茸、エリンギは、コクと香りをもたらします。
- 乾燥昆布などの海藻は、奥行きのあるやさしい甘みを加えます。
- 完熟の赤いトマトは、じっくり炒めたり焼いたりすると、さらに旨みが増します。
- 味噌、チャオ(ベトナムの発酵豆腐)、しょうゆ:発酵によって大豆のたんぱく質がコクのある旨み成分に変わります。
- 大根、スイートコーン、にんじん、ハヤトウリ、ヒカマ(củ đậu)は、すっきりとした甘みをくれます。

化学調味料いらずの野菜だし
おいしいだしは、フォーやブン(米麺のスープ)、フーティウ、スープや煮込みなど、一週間のさまざまな料理のベースになります。作り方は次のとおりです。
- 干し椎茸を数枚さっと洗い、昆布と一緒に水に数時間、または冷蔵庫で一晩浸けます。戻し汁も取っておきます。
- 玉ねぎとしょうがを皮が焦げるまで焼くと、だしの香りがよくなります。
- 大根、ぶつ切りにしたとうもろこし、にんじん、ハヤトウリを椎茸の戻し汁と一緒に鍋に入れ、中火にかけます。沸騰する直前に昆布を取り出すと、だしがぬめったり苦くなったりしません。
- 沸いたら弱火にしてアクを取り、約1時間静かに煮ます。強火でぐらぐら煮ると濁りやすくなります。
- ざるで漉し、塩、氷砂糖少々、しょうゆを数滴で味を調えます。最初は薄めにして、料理ごとに調整しましょう。
- 手早く冷まして保存容器に小分けし、冷蔵庫で2~3日、長く使うなら冷凍します。
長く煮込む鍋にキャベツやカリフラワーをたくさん入れると、だしにクセのある匂いが出やすいので避けましょう。
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だしは甘みを、高い温度は香りをもたらします。野菜、きのこ、豆腐をこんがり焼き色がつくまで焼くと、表面の糖とたんぱく質が反応して、香ばしい皮膜と深い味わいが生まれます。茹でたり蒸したりでは出せない味です。料理人はこれをメイラード反応と呼び、糖のカラメル化と一緒に進みます。
- 豆腐、きのこ、野菜の水気はしっかり拭き取ります。表面が濡れていると、焼き色がつかず蒸し焼きになります。
- フライパンと油を先に熱し、重ならないよう間隔をあけて並べます。
- 下の面が均一にきつね色になるまで動かさず、それから裏返します。早く返すと豆腐が崩れてくっつきやすくなります。
- きのこは水分を飛ばして縁が焦げるまで焼いてから、塩やしょうゆで味つけします。
- なす、とうもろこし、エリンギは、刻んだレモングラス、しょうゆ、少しの油に漬けてから、炭火かオーブンで焼きます。

ベトナムの味つけ レモングラス、しょうが、こしょう、ハーブ
ベトナムのキッチンには、ベジ料理にうれしい強みがあります。フレッシュな香味素材が豊富なことです。レモングラスはさわやかで清涼感のある香りで、レモングラス風味の揚げ豆腐や、きのこのレモングラス・唐辛子炒めによく合います。しょうがは温かくほんのり辛く、煮込み、蒸し料理、つけだれに向いています。挽きたてのこしょうは煮物や甘辛く煮詰める料理の香りを立たせ、生の唐辛子は少しの辛さを足してくれます。
ハーブは、ベトナムのベジ料理ならではの個性です。フォーにはバジルとノコギリコリアンダー、揚げ豆腐にはシソとナギナタコウジュ(キンジョイ)、ベジ版の酸っぱいスープにはライスパディハーブ、きのこをくるんで焼くのにはキンマの葉。ライムやタマリンド、パイナップルのほのかな酸味も、料理を爽やかにして、重たさを和らげてくれます。
玉ねぎ、にんにく、にら、らっきょうなどを避ける「五葷(ごくん)」の菜食を実践している方も、ここで紹介した香味素材ときのこ、ハーブがあれば、香りよく、まとまりのある味に仕上がります。

Nhà An のキッチンのだしの取り方
Nhà An のメニューはすべてベジタリアン料理で、だしは野菜から取り、化学調味料は使いません。甘みを野菜そのものから引き出したいからです。ビンタンのベジ版フーティウ・ナムヴァン(プノンペン風の麺)は大根のやさしい甘みが際立ち、中部のベジ版ミークアン(ターメリックの黄色い麺)はきのこやピーナッツ、黄金色の麺でコクがあります。
キッチンでは、季節のオーガニック野菜と、毎朝作る絹ごし豆腐を大切にしています。Nhà An は農家さんと直接やり取りし、食材の出どころをきちんと把握しています。オープン後は、卵も乳製品も使わないヴィーガン料理をカウンターで別途ご案内します。各料理の内容については、スタッフにもお気軽にお尋ねください。
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